韓経:韓国、6G通信・月軌道船・独自の測位衛星まで…毎年10基打ち上げ

  • 2021年2月19日

10月に空へ…全羅南道高興・羅老宇宙センター組立棟で韓国航空宇宙研究院の職員がヌリ号の組立作業をしている。[写真 韓国航空宇宙研究院]

人工衛星と月探査機などを宇宙に積んで運ぶ初の国産化ロケット「ヌリ号」が、10月の打ち上げを前に実戦演習の真っ最中だ。ヌリ号は韓国航空宇宙研究院と現代(ヒュンダイ)重工業、ハンファ、スペースソリューションなど韓国企業300社以上が合同で開発した韓国型ロケットだ。通信・測位衛星の国産化事業も、ことし初めて始まる。

18日、韓国科学技術情報通信部と航空宇宙研究院(以下、航宇院)、セトレックアイなどによると、韓国がことしから2027年までの7年間に打ち上げる衛星は71基に及ぶことが確認された。来月、カザフスタンが打ち上げる次世代中型衛星1号に続き、来年は多目的実用衛星(アリラン)6・7号と試験用月軌道船(月人工衛星)が宇宙に向かう。2024年からは3年間、観測・偵察用小型群集衛星50基あまりを発射する計画だ。韓国初の通信衛星・千里眼(チョルリアン)3号は、2027年の打ち上げを目指し、来月主管機関を選定する。

7基の測位衛星を製作する4兆ウォン(約3800億円)規模の韓国型測位システム(KPS)事業も、ことし上半期に予備妥当性調査を経て、来年から開始する。人工知能(AI)技術の結晶である自律走行車、フライングカー、ドローンなどの運行に必要な未来型通信システムを構築するためだ。

ビッグデータに基づくディープラーニングやクラウド技術が発展したことで、観測・偵察、通信、測位全般にわたり衛星の需要が急増しているという分析が出ている。モルガン・スタンレーは、2040年に世界の宇宙産業市場が1兆1040億ドル(約116兆6400億円)に及ぶと予想した。2019年(3660億ドル)に比べ、約3倍増の規模だ。航宇院関係者は、「今が世界の宇宙開発競争で遅れをとらない最後のゴールデンタイム」と述べた。

◇韓国企業300社の航空宇宙技術の結晶…「ヌリ号」ことし宇宙に行く

◇全羅南道高興ヌリ号燃焼試験棟に行くと

全羅南道高興外羅老島(チョルラナムド・コフン・ウェナロド)にある羅老(ナロ)宇宙センターヌリ号総合燃焼試験棟。先月末に会った燃焼試験総責任者のチョ・ギジュ航宇研発射体推進機関体系チーム長の顔には緊張した様子がありありと見えた。第1段のエンジン燃焼試験が成功するかどうかが、ことし10月の第1次打ち上げの成否の分け目だからだ。航宇研は先月28日、第1段エンジンの30秒燃焼試験に成功したが、難易度が高い100秒、127秒の燃焼試験を控えている。一度でも失敗すれば、ことしの「ヌリ号」の打ち上げはまた、水の泡になりかねない。韓国経済新聞がヌリ号専用発射台と燃焼試験場を韓国メディアで初めて訪れた。

◇第1段の燃焼試験、いよいよ開始

ヌリ号組み立て棟の職員は、実際に打ち上げに使用される飛行モデル(FM)の組み立ての真っ最中だった。コ・ジョンファン航宇研韓国型ロケット開発本部長は「第1段は、数年間、莫大な投資が入った国内航空宇宙の力量の結体かつ心臓」と述べた。宇宙開発に大規模な予算を投入する米国、ロシアなどは発射体技術力が国家安全保障に直結するという判断の下、エンジンの技術を他国と共有しない。2013年に打ち上げに成功した「羅老号」の開発過程でも、韓国政府は液体エンジンが搭載された第1段を、ロシアから持って来たが、核心技術の譲渡を受けることができなかった。

航宇研は75トン級エンジンを羅老号の初の打ち上げから6年が過ぎた2015年に初めて開発し、試験に入った。燃焼不安定現象に数度も設計図を変更した末、今まで累積1万6000秒分の燃焼試験を行った。300トンの推力を出すためには、エンジン4基が一体化して作動するように連結する必要がある(クラスタリング)。当初は今月打ち上げ予定だった日程が10月に延期されたのもエンジンのクラスタリングの問題のためだ。先月末、1次燃焼試験が初めて成功にエンジン4基が合わさった第1段が実際に火を噴く段階までようやく到達した。

◇自力衛星打ち上げ元年

韓国型ロケット開発事業の目的は、1.5トン級の実用衛星を低軌道に乗せることができるロケットを確保することだ。宇宙技術先進国に仲間入りするためには、高性能の人工衛星と、これをいつでも自国で打ち上げることのできる、独自の発射体技術が重要だ。韓国は人工衛星の分野で観測解像度基準で世界6~7位の技術力を持つと評価されているが、衛星の核心部品はほとんど海外に依存している。ロケット技術力はこれよりもずいぶん遅れている。自力で衛星を打ち上げることができる技術がなかった。2010年から2兆ウォンを投入してヌリ号を開発してきた理由だ。打ち上げに成功すれば、韓国は宇宙先進国の仲間入りのためのよちよち歩きを卒業する。

ヌリ号エンジンは、2008年に米国の民間企業スペースXが「ファルコン1」ロケットの打ち上げに活用した「マーリン1C」より推進力が劣る。航宇研は、後続事業を通じてスペースXが100基あまりの人工衛星をまとめて打ち上げた「ファルコン9」ロケットに搭載されたエンジン「マーリン1D」の水準に引き上げる計画だ。

◇企業300社の技術集約

組立棟を過ぎ、ヌリ号を打ち上げる発射台に移動すると巨大な緑色の鉄製の構造体が視野を圧倒した。ロケットと接続して燃料を供給する役割をする「アンビリカル(umbilical)タワー」だ。見た目はごついが、高度の精密さが必要だ。発射前の機体をしっかりと固定して打ち上げの瞬間には、複数の「腕」が一寸の誤差なく同時に離れなければならないからだ。

現代重工業がアンビリカルタワーを含むロケットシステムの開発と建設に参加した。コ本部長は「現代重工業はLNG(液化天然ガス)船を建造し、爆発の危険性が高い液体を安定的に供給する技術力を備えている」とし「このような技術がヌリ号発射台の建設に適用された」と語った。

ヌリ号エンジンの開発は、ハンファ・エアロスペースが担った。航空機用ガスタービンを生産し、英ロールス・ロイスなどに輸出して積み重ねた精密加工技術と高温耐熱素材技術力を活用した。韓国航空宇宙産業(KAI)はヌリ号第1段の大型推進体タンクを生産した。飛行モデル第1~3段を接続する総合組み立ても行っている。

開発事業を通じて高度化した技術は、再び民間分野に活用される見通しだ。密閉された空間の気体や液体の圧力を精密に扱う技術は、機械装置の分野に適用可能だターボポンプ技術は、船舶用エンジンの開発にそのまま活用される。エンジンの流量を微調整するためのアルゴリズムは、点滴治療機器に融合が可能となり、ヘルスケア産業にも活用できる。

◇10大宇宙強国に向かって「技術合体」

第5世代(5G)・第6世代(6G)など次世代通信サービスに人工知能(AI)基盤の衛星が必要だと認識されたことから、通信衛星の需要が急増している。米国の衛星産業協会(SIA)の2020年の報告書によると、衛星の高速インターネット市場規模は2019年は28億ドルだったが、前年(24億ドル)より16.6%増えた。モルガン・スタンレーは、低軌道衛星インターネットサービスの需要が急増し、この市場が2040年ごろに4120億ドル規模に成長すると予想した。スペースX、アマゾン、ワンウェブなどが衛星数百個を飛ばし、低軌道を先占するために熾烈な競争を繰り広げる理由だ。

ハンファグループのセトレックアイ買収、韓国航空宇宙産業(KAI)とLIGネクスワンの小型衛星開発協約など韓国の宇宙産業界でも年初から新しいニュースが続いた。衛星産業が国際市場でブルーオーシャンに浮上し、企業の動きも早まっている。衛星は観測(偵察)、通信、測位衛星用に分類されるが、まだ韓国は独自の技術で開発した通信、測位衛星がない。この2つの衛星の国産化がことしから始まる。観測衛星の種類も多様化する。

来月20日にカザフスタンが打ち上げる次世代中型衛星1号は観測専用の「シリーズ衛星」だ。地上500キロメートル前後の低軌道で災害・災難監視、農林・水資源観測任務を遂行する。次世代の中型衛星2~6号も2025年までに順次打ち上げられる。国土交通部、環境部などが活用する計画だ。

来年にはアリラン(多目的実用衛星)6号と7号の打ち上げが予定されている。アリラン6号は、気象条件に関係なく韓半島(朝鮮半島)一帯を全天候で観測するレーダー(SAR)衛星だ。高難易度の技術が必要で欧州連合(EU)のエアバスDSから技術を伝授され、航空宇宙研究院などが開発中だ。7号は、解像度が30センチメートル以下の超高解像度光学衛星だ。AP衛星が2つの衛星開発に参加している。2つの衛星は、500~600キロメートルの高度で特定地域撮影時間が常に同じ太陽同期低軌道で動く。

超小型群集衛星事業も最近、システム要件分析(SRR)を終え、今月から基本設計検討(PDR)に入る。光学解像度1メートル以下の観測衛星でKAISTとセトレックアイが開発中だ。2024~2026年に11基打ち上げる。これらと同時に群集運用するレーダー衛星40基は国防部が打ち上げる。

ナビゲーションを使っていると、的外れな道案内することが少なくない。GPS(衛星測位システム)が外国の技術である上、信号のエラーを制御する補正技術も国内にないためだ。航空宇宙研究院の関係者は、「ドローン配送、自律走行タクシー、都心航空モビリティ(UAM)が普遍化されるためには現在のGPSの精度とナビゲーション技術では到底無理」とし「独自のローカルナビゲーションシステムとこのシステムエラーを補正する技術が必要だ」と説明した。

ことし上半期の予備妥当性調査を終え、来年から本格化する韓国型ナビゲーションシステム(KPS)構築事業は、2035年までに衛星7基の打ち上げ、インドと日本が保有している地域航法システムに匹敵する独自の航法システムを造成するのが重要な内容だ。事業規模は約4兆ウォンだ。KPS事業の事前準備の段階で、航空宇宙研究院が国土部・海洋水産部と韓国型衛星測位補正システム(KASS)を構築している。GPS信号の誤差を減らす搭載体を製作し、衛星に搭載して性能を検証する事業だ。江原道襄陽(カンウォンド・ヤンヤン)、京畿道楊州(キョンギド・ヤンジュ)、慶尚北道栄州(キョンサンブクド・ヨンジュ)、忠清北道清州(チュンチョンブクド・チョンジュ)、光州(クァンジュ)広域市、釜山影島(プサン・ヨンド)など全国11カ所に関連機器を設置している。事業が完了すれば、全地区の航法システム4種(GPS・グロナス・ガリレオ・百度)を補完する補正システムを保有する7カ国目となる。

ことし4月、韓国初の通信衛星・千里眼(静止軌道複合衛星)3号の開発主管機関が選定される。韓国電子通信研究院(ETRI)が有力だ。この衛星はKaバンドの27~40ギガヘルツの周波数搭載体が入る。「真の5G」と呼ばれる28ギガヘルツブロードバンドサービスは、基地局だけでは不可能でKaバンドの衛星が必要だ。移動通信標準化国際協力機構(3GPP)が地上の通信網と衛星間の連携を5G以降、国際標準として採用した理由だ。それだけ衛星と交信するアンテナの需要も増えている。

衛星核心部品を国産化する「スペースパイオニア」事業もことしから始まる。衛星の姿勢を制御する制御モーメントジャイロ(CMG)、Kaバンドデータ送信機など13種類の部品を国産化するプロジェクトだ。