韓経:生産が追いつかなくても工場は5時退勤…「中国に仕事を奪われる」=韓国

  • 2020年5月15日

蔚山の自動車部品会社の職員が週52時間勤務制に合わせて作業を終えた後、午後5時ごろバスに乗っている。 蔚山(ウルサン)=アン・テギュ記者

慶州(キョンジュ)で自動車部品製造会社を運営するP社のパク代表は最近、頭を悩ませている。GV80やパリセードなど人気新車の部品の注文に生産が追いつかないが、週52時間勤務制に縛られて生産量を増やせないからだ。

同社は自動車2万4000台に入る部品の注文を受けた状態だ。100日ほど作業してこそ生産できる量だ。パク代表は14日、「新型コロナ事態後、自動車の輸出がふさがって大きな損失を出した」とし「ようやく訪れたチャンスだが、週52時間制が足かせになっている」と語った。

硬直した週52時間勤務制が新型コロナ衝撃からの回復に注力する産業現場で障害になっているという声が高まっている。新型コロナ事態という危機を克服し、ポストコロナ時代をチャンスにするためには、週52時間勤務制を一時的に猶予するか、補完策を用意すべきだという指摘が出ている。

中国産資材を輸入して骨組工事をするC建設会社は工期を合わせるのに苦労している。新型コロナ事態後、現地工場の休業などでふさがっていた中国産資材が最近搬入され、作業の遅れを取り戻すために勤務時間を大幅増やさなければいけない状況だ。しかし52時間勤務制が壁になっている。

大韓建設協会はこうした困難を訴える会員会社が増えると、「原材料輸入および調達遅延などの場合」を52時間勤務制の例外として認める特別延長勤務認可事由に追加してほしいと雇用労働部に正式に建議した。特別延長勤務とは、例外的な状況で週52時間以上勤務できるようにする制度。

しかし申請から1カ月が過ぎても返答はない。政府は1月末、特別延長勤務関連施行規則を改正し、災害と災難のほか業務量急増など経営上の理由による特別延長勤務も可能にしたが、追加の事由を反映するには難色を示している。

韓国経営者総協会が最近、新型コロナで被害を受けた223社を対象にアンケート調査を実施した結果、企業は「柔軟勤務制改善」を新型コロナ危機克服のために最も緊急な労働関連改善課題と答えた。

「このままでは7月まで持ちこたえる会社はあまりないはず」--。

慶尚南道昌原市(チャンウォンシ)に本社を置く自動車部品会社J社のパク社長はため息をつきながらこう話した。52時間勤務制に阻まれ、押し寄せる現代・起亜自動車の新車の部品注文を消化できずにいるからだ。新型コロナ事態で自動車部品会社の連鎖倒産が憂慮される状況で訪れたチャンスであるだけに、パク社長は何とかしようと焦りを感じている。パク社長は「延長勤務の拡大こそが財政の支出なく生産と消費活性化効果を大きく増やす方法なのに…」と遺憾を表した。

◆生産遅延で注文取り消し続く

現代車は4月の1カ月間、内需と輸出を合わせて計15万9079台の自動車を販売した。前年同月比で56.9%も減少した。国内市場では善戦したが、米国・欧州など主力販売市場での需要減少と海外工場の稼働停止で輸出が急減した。自動車部品業界は2月、現代車蔚山(ウルサン)工場が新型コロナの影響で稼働が3回停止したことで、衝撃を受けた。新型コロナ事態が長期化し、流動性も危機を迎えた状態だ。今年の新車発売計画に合わせて昨年数十億ウォンをかけて設備投資したJ社は量産が延期され、設備投資による銀行利子だけを支払っている。

自動車部品業界は最近、注文が増えている一部の人気車種の生産を現危機を打開する唯一の突破口として期待しているが、52時間勤務制が壁になっている状況だ。現代車によると、パリセードは当初、月3000台の販売を予想していたが、現在、月8000台以上売れている。ジェネシスGV80も国内市場で好評を受け、月4500台以上売れている。自動車部品業界が予想する新車の納車待ちはジェネシスGV80が2万4000台、G80が3万7000台、パリセードが3万台にのぼる。

ある自動車部品会社の代表は「これら車種の納車待ちは当初3カ月だったが、最近は5-6カ月に増えた」と説明した。しかし「52時間勤務制のため生産が追いつかず、納車待ちの期間が長くなり、海外ライバル企業の攻撃的マーケティングまでが増え、注文取り消しが続出している」と伝えた。

◆産業現場のあちこちで不満の声

硬直した52時間勤務制に対する不満の声は、新型コロナ発不況からの脱出に全力を尽くしている産業現場のあちこちで高まっている。船舶修理企業は荷主の日程に合わせて短期間に集中的に船舶を修理する必要があるが、対応できないという。韓国船舶修理工業協同組合のキム・グィドン理事長は「船舶の修理は時には週70-80時間の勤務でも足りないほど不規則な状況が多い」と述べた。続いて「業種の特性を無視した画一的な52時間勤務制適用による副作用を減らすべきだ」と主張した。

建設業界も52時間勤務制のため多くの建設現場が予定の工事期間に合わせるのが難しい状態だ。特に52時間勤務制が導入される前に落札した事業場が問題だ。下請け会社が工事段階で52時間勤務に合わせる場合、当初予想していた人件費をはるかに上回るしかないからだ。建設会社の関係者は「工期を合わせるために現場の人員を増やし、発注金額を超えて損失を出す事例が多い」と話した。

尹ジョン源(ユン・ジョンウォン)企業銀行長は3月、労働組合から52時間勤務制など勤務基準法を違反したとして告発された。新型コロナ危機克服支援として中小企業に対する6000億ウォン規模の融資を決めたことで、関連業務が突然増えたのが原因だった。

◆「晩の時間がある生活は保障されたが、夕食の支出は減少」

慶尚北道地域の零細自動車部品会社で勤務するキムさんは52時間勤務制の導入後、月給が30%近く減り、週末のアルバイトを探している。20-30人の勤労者が勤務する中小企業は夜勤、特別勤務をしながら月給を増やすことが、「晩の時間がある生活」より重要だというのが、キムさんの主張だ。

キムさんは「52時間勤務制の導入以降、賃金が減ったため、週末の勤務者を求めるコンビニやマート、代行運転会社などでアルバイトをする同僚が増えている」とし「政府が『晩がある生活』を保障したが、『夕食代がない生活』『週末がない生活』を抱かせた」と吐露した。自動車部品業界の関係者は「52時間勤務の導入で雇用が増えるというのは政府の錯覚」とし「多くの企業はロボット導入や工場自動化などで対応している」と指摘した。

◆海外ライバル企業に「反射利益」

政府が52時間勤務制を固守し、「ポストコロナ」時代に市場を獲得する機会まで逃すのではという懸念が出ている。慶尚南道自動車部品会社B社は最近、グローバル自動車企業から受注するため入札に参加したが、結局、中国企業が受注することになった。最大の理由は52時間勤務制による生産量制限と納期遵守問題だった。同社の代表は「52時間勤務制から自由な国の企業が入札で有利になるしかない」と述べた。

あるグローバル自動車会社は昨年、韓国国内の頻繁なストライキで生産に支障が生じると、他国の工場での同一モデル生産を増やし、これをカバーしたという。慶尚北道所在の自動車部品会社D社の関係者は「過去には5月から夏の休暇シーズン(7-8月)直前まで労働組合がストライキをしても、下半期に夜勤や特別勤務、週末勤務などで生産量を前年水準に増やすことが可能だった」とし「52時間勤務制が導入されてからはこれが不可能になった」と吐露した。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は4日、就任3周年特別演説で「新型コロナ危機を機会にする」と宣言した。続いて「大韓民国が『先端産業の世界工場』になり、世界の産業地図を変える」という青写真を提示した。中小企業中央会のチュ・ムンガプ経済政策本部長は「新型コロナ危機の克服だけでなく、ポストコロナ時代の青写真を実現させるためにも、勤務時間規制の壁を一時的にでも低める必要がある」と強調した。