韓経:韓国元副首相「競争と革新なければ韓国経済は滅びる」

  • 2020年5月12日

田允チョル(チョン・ユンチョル)元副首相兼財政経済部長官

田允チョル(チョン・ユンチョル)元副首相兼財政経済部長官は11日、「韓国がポストコロナ時代を先導するには政府が革命的な水準で規制を廃止し、企業が存分に世界の舞台で競争できるようにしなければならない」と話した。田元副首相は韓国経済新聞とのインタビューで、「新型コロナウイルス問題が呼び起こした文明史的な変革を迎えて新たな産業が生まれ既存産業が退潮するのは逆らえない世界的な流れ」としながらこのように強調した。

彼は「革新の挫折」がもたらす副作用を警戒した。田元副首相は「米国など先進国では配車アプリのウーバーを筆頭に新たな産業がめざましく発展し消費者も恩恵を得ているが、韓国だけ遅れている。ライドシェア企業の『タダ』のように既存の利益集団の反発に阻まれ新たな事業が挫折することが繰り返されればだれも革新に出ないだろう」と懸念する。続けて「競争と革新がなければ韓国経済は滅びるほかない」と断言した。

田元副首相は1997年から2003年まで公正取引委員長と企画予算処長官、副首相兼財政経済部長官を歴任した。2003~2008年には監査院長を務めた。彼は通貨危機で崩壊した経済が再び回復する姿を見て「自由な競争」の力を実感したという。田元副首相は「通貨危機の時も50余りのグループのうち10以上のグループが潰れたが韓国経済は生き残らなかったか。むしろ激しい競争と革新を経ながら経済体質が一段階アップグレードされた」と説明した。

経済危機に活路を作り雇用を創出した主役は競争を通じて革新を繰り返した企業というのが彼の考えだ。田元副首相は「勝者独占による被害は政府が補完すべきだが、新産業を防ぐ形で企業の革新意志を折ってはならない」と話した。

田元副首相は「規制を改革することと請願処理を同じと考える官僚がまだ多い」として規制権限を持つ公職者の意識変化も促した。

◇田元副首相「韓国版ニューディール、政府ではなく民間が主導してこそ成功」

◇「規制改革は面倒なことではなく経済成長の障害物を除去するもの」

田元副首相兼財政経済部長官は通貨危機後に韓国経済の体質転換を陣頭指揮した巨木だ。金泳三(キム・ヨンサム)政権末期の1997年から盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権まで11年間にわたり公正取引委員長、企画予算処長官、大統領秘書室長、副首相兼財政経済部長官、監査院長などの要職を歴任した。

田元副首相は韓国が通貨危機の高波を乗り越えてIT強国に跳躍したように、新型コロナウイルスを新たな跳躍の機会にすべきと強調した。前提条件としては「革命的な水準の規制廃止」を挙げた。

現役から引退して長い時間が過ぎたが規制廃止の重要性を説明する彼の声は断固としていた。在任当時に自己主張が強かった彼は依然としてまっすぐ政府に向け苦言を吐き出した。田元副首相は新型コロナウイルス発の経済危機の本質を突き抜けて具体的な解決策と案も提示した。彼とのインタビューは11日にソウル市内のホテルで行われた。

――現政権も規制改革を強調していますが。

「政府が『社会的規制』と『経済的規制』を混同しているようで心配になります。社会的規制は保健ルールなど国民の命と安全を保護する規制です。韓国が新型コロナウイルス防疫で優秀な成果を上げたのも社会的規制を効果的に執行したおかげです。だがこれを『経済的規制も強化すべき』という意味に間違って受け止めてはなりません」

――規制改革がだめな理由は何ですか。

「規制を改革することと請願処理を同じと考える官僚がまだ多いです。規制廃止を『企業の活動と成長を妨げる障害物を片づけること』ではなく『面倒なこと』とだけみる認識が公職社会全般に蔓延しているということです。過去に国が経済を設計し成長を主導した時期の慣性がまだ残っているためです。官僚集団のこうした認識から変えなければなりません」。

――韓国政府が推進すると明らかにした「韓国版ニューディール」はどうですか。

「政府が方向を設定し民間がついて行く方式はこれ以上有効ではありません。韓国版ニューディールの核心も、経済を最もよくわかっている企業が安心して走れるようにする規制廃止が先行しなければなりません。時々刻々と変わる最先端技術と市場状況を最もよくわかっているのは企業だからです。雇用創出効果も未知数です。人間の力と頭脳を機械が代替して労働集約的産業が知識集約的産業に変わるのがデジタル革命の本質ではないですか。新しい種類の雇用が生まれるでしょうが大量雇用を期待するのは難しいです」

――雇用を創出するにはどのようにすべきでしょうか。

「結局韓国国内に競争力ある企業が多くなければなりません。一律的な週52時間労働制適用など非合理的な労働規制を緩和するのが急務です。企業が新たな収益源を見つけ出すには高熟練労働を集中的に投じるべきなのに、韓国企業だけ規制に妨げられて研究を止めれば市場から淘汰されるのは火を見るより明らかです。強硬路線の労組問題も解決しなければなりません。副首相在職当時に『労組リスク』を避け東南アジアなどに離れる企業がありましたが、こうした傾向がますます激しくなりそうで心配です」

――企業の雇用創出を妨げる別の要因は何ですか。

「労働のほかに企業の成長を左右する重要な要素は資本投入です。優先順位を決めて必要なところに十分な資金を投じてこそ企業がポストコロナ時代の市場変化に適応できます。ところが政府と与党は協力利益共有制と労働理事制など企業の投資を阻害する政策を推進しています。私もやはり副首相時代に労働者の賃金を上げる政策を推進しました。だがいまの政権は企業の今後の投資のための資源までもすべて労働者と下請け業者に分配し、意思決定も労働者に任せろと言っています。このようになれば企業家精神が萎縮するほかありません」

――韓国政府は全国民雇用保険制度導入を推進するといいます。

「全国民雇用保険制度は保険の基本的な原理から外れる発想です。いまの雇用保険は会社員と公務員が長期にわたり就業状態を維持し、きちんと雇用保険料を納めたおかげでどうにか財政均衡を合わせています。だがここに深刻な事業上の浮沈を体験する自営業者まで含めれば保険財政が急速に悪化し、結局これは汗を流して誠実に働く国民の負担として戻ってくるほかありません。国の債務比率は一度上がり始めれば際限なく上がります。いま債務比率が経済協力開発機構(OECD)の中で低い方だからと安心してはいけません」

――韓国が新型コロナウイルス後の時代を先導するにはどのようにすべきでしょうか。

「世界の産業構造全体が急激に変わっています。新しいビジネスが終わりなく胎動し、また消えるでしょう。生き残るための競争がさらに激しくなっています。企業が存分に世界の舞台で走れるように環境を作らなければなりません。革命的な水準で規制を廃止すべきです」

――最近廃業した『タダ』が思い起こされます。

「規制で革新が挫折した代表的な事例がタダです。海外の先進国ではライドシェアのような新しい産業がめざましく発展するのに韓国はそうではありません。このように既存の利益集団の反発に阻まれ新しい事業が挫折することが繰り返されれば韓国経済に希望はありません」。