韓経:【コラム】「言葉に注意マニュアル」=韓国

  • 2019年5月17日

昔の言葉に間違っているものは一つもない。韓国のことわざに「話はするほど粗くなり、粉は挽くほど滑らかになる」というものがある。中国・宋の時代、類書『太平御覧』は「病は口より入り禍は口より出ず」(病気は口から入るものが原因だが、災いは口から出たものが原因で起きる)と教えた。聖書の格言は「愚かな者の唇は争いを起こし、その口はむち打たれることを招く」として人々を戒めた。

最近、「中傷・失言コンテスト」真っ只中の韓国政界を皮肉った言葉のようだ。「さらに強く、さらに刺々しく、さらに口汚く」やってこそ効果があると言わんばかり言葉がますます殺伐としている。羅卿ウォン(ナ・ギョンウォン)自由韓国党院内代表が文在寅(ムン・ジェイン)大統領支持派を中傷した「タルチャン」発言で非難を受けると、李貞味(イ・ジョンミ)正義党代表は黄教安(ファン・ギョアン)韓国党代表を「サイコパス」と呼んだ。すぐに怒りをあらわにすることで有名な「急ギレ李海チャン(イ・ヘチャン)」の異名を持つ与党代表は、野党を「泥棒」と呼び、金武星(キム・ムソン)韓国党議員の口からは「青瓦台(チョンワデ、大統領府)爆破」発言まで飛び出した。誹謗中傷の言葉に男女・老若・左右の別はない。

政治家のこうした下品な言葉はいまさらのことでもない。与野党を問わず、歴代大統領を「鬼胎(生まれるべきではなかった人間)」「トゥンシン(間抜け)」「ノガリ(ホラ吹き)」「チュィパギ(ネズミ李明博)」「クニョン(朴槿恵のアマ)」など口にするのもはばかられるような言葉で貶めるのが常だった。繰り返し聞いているとある程度の言葉には免疫ができてしまう始末だ。

このような言葉が絶えないのは政治的に得になると考えるためだ。基本的に「クァンジョン(目立ちたがり屋)」である政治家にとっては、存在感を誇示して支持層の結集を狙う手段であるといえる。したがってこのような言葉が頻繁に出てくるようになるのは総選挙が近づいたというシグナルだ。相手がすれば中傷でも、味方がすればサイダーのようにスカッとするいわゆる「サイダー発言」と考える大衆のダブルスタンダードがその土壌になる。

だが、のどが渇いているときにサイダーが気持ちよく感じられるのはその時だけなのと同じように、こうした言葉はブーメランのように自分自身に返ってくる。下品な言葉で身を滅ぼした政治家が数多くいても、これで成功した政治家がいない理由だ。有権者が愚かに見えても、彼らの「帳簿」ではしっかりと減点されていることを政治家は肝に銘じるべきだ。

日本自民党が7月参議院選挙を控えて「失言防止マニュアル」を作って目を引いている。所属議員や候補が不適切な発言で票を失うことを防ぐためのものだという。このようなマニュアルが出るのはよほどのことだと思いつつ、日本の政治も韓国と違わないというのが興味深い。

中傷や失言は制度やマニュアルで矯正できる問題ではない。一人一人の心のあり方と集団の水準にかかっている。「修身斉家(自分や自分の家庭を整えること)」すらできない者が「治国平天下(世の中を治めること)」を論じること自体が現代政治の喜劇であり悲劇だ。

中国の五代十国時代、10人の君主に仕えたという宰相・馮道は「口是禍之門舌是斬身刀(口は災いを招く門で、舌は身を切る刀だ)」と言った。言葉ひとつですべてが吹き飛んでしまうことがある。

オ・ヒョンギュ/論説委員