韓経:【コラム】米朝首脳会談の決裂、「定義」が問題だ

  • 2019年3月5日

「完全に平等な社会をつくるために新政権が動き出した。頭の良い人たちには耳に精神障害受信機を付けさせた。20秒ごとに鋭い雑音を放って脳に衝撃を与えた。美形の人には仮面をかぶらせ、踊りが優れたダンサーには足に重りをつけさせた」。

米国の小説家カート・ヴォネガットのSF短編「ハリスン・ バージロン」に出てくる話だ。こうした社会は画一的な下方平準化の沼に落ちるしかない。誰でも大学に進学できる「機会の平等」はなく、誰もがC評価の平均点を受ける「結果の平等」に縛られてしまう。平等(equality)という概念を機械的に解釈したからだ。

人間は言語を通じて思考する。言語は疎通と行動の媒介でもある。したがってどの言葉も事物の意を明確にして規定することが必要だ。これが定義(definition)だ。誤った定義はゆがんだ信念を生み出す。ゆがんだ信念は極端な対立をもたらす。時には社会葛藤と国家間対決までも招く。

米国と北朝鮮の2回目の首脳会談が決裂したのも用語の定義が異なっていたからだ。非核化の定義からしてそうだった。北朝鮮は「寧辺(ヨンビョン)核施設の廃棄が非核化」と主張したが、米国は非核化の一部にすぎないとして一蹴した。寧辺核施設の範囲についての定義も違った。北朝鮮は寧辺の全部と主張したが、米国は一部だけだったと反論した。

北朝鮮はソウル汝矣島(ヨイド)の2倍の寧辺団地のうちプルトニウム抽出が可能な原子炉と再処理工場だけを寧辺核施設だと言い張った。しかし米国はウラン濃縮施設まで含めるべきだと強調した。寧辺には高濃縮ウラン生産施設など核物質生産・保管・処理に関する390以上の建物が密集しているという。

根本的には非核化の概念からして差がある。韓国と米国は「北朝鮮非核化」を要求しているが、北朝鮮は「韓半島(朝鮮半島)非核化」で対抗している。「終戦宣言」も戦争終結意志を宣言することから軍事的配備と駐留の正当性を含むものまで意味が多様だ。「平和協定」も平和定着に対する恒久的かつ基本的な方向設定という意味と、軍縮および在韓米軍撤収概念を合わせた意味で異なる解釈をしたりする。

用語解釈間の間隙を狭めて不確実性を減らさなければ、北朝鮮の非核化と韓半島の平和定着は遠ざかってしまう。用語の正しい定義は名をただす正名ほど重要だ。定義が確立されなければ正義も真っすぐに立たない。ジョージ・オーウェルの小説『1984』に登場する全体主義国家が戦争を主管する部署を平和部と呼ぶのと同じだ。