韓経:【コラム】水素経済と政権リスク=韓国

  • 2019年2月22日

「偶然」「不確実性」「リスク」などに「オプション」と「分散」で対応するのは金融だけでない。進化の速度と方向性を予測しにくい科学技術分野も変らない。霧が消え始めれば誰もが「選択と集中」をするが、それまではいくつかの可能性を考慮するしかない。

文在寅(ムン・ジェイン)政権が「水素経済長期ロードマップ」を出した。現在の時点で燃料電池自動車をめぐりさまざまな意見が出るのはおかしなことではない。長期プロジェクトに進むには技術的、経済的、社会的に解決すべき課題が多いということだろう。燃料電池自動車を越えて産業生態系レベルで各国が自動車を戦略産業とするグローバル市場に目を向ければゲームはさらに複雑になる。

しかしこのすべての不確実性にもかかわらず「水素経済」というもう一つの可能性を準備すること自体に反対する理由はない。経済界と科学技術界が心配する点はむしろ別のところにある。2040年までのロードマップなら大統領が何度か交代するが、政府が忍耐心を持って長期プロジェクトを推進できるのかという点だ。

いつからか韓国では「技術リスク」「経済リスク」「社会リスク」よりも恐ろしいリスクが加わった。「政権リスク」だ。前政権がしたことはすべて否定する政治的な場面が繰り返された結果、一種の学習効果が生じた。政権リスクを放置すれば、どの政権になっても長期プロジェクトは推進されにくい状況になってしまった。

方法がないわけではない。基本的に考えられるのは「政府はすべての技術に対して開放的な態度を持つ」という原則だ。政府がこの原則だけを遵守しても状況は変わる可能性がある。革新をリードする国であるほど技術競争を奨励し、投資環境を整える。韓国のように前政権が支援したという理由で、検証もされていない偏見で特定技術を排除し始めれば、残る技術はない。文在寅(ムン・ジェイン)政権が「脱原発」をするように次の政権が「脱水素」をしないとは限らない。このように進んでいけば「創造的破壊」でなく「破壊的創造」になってしまう。

長期プロジェクトの企画と推進、評価を専門家集団に一任し、政府は支援だけをする方法もある。ドイツのように工学アカデミーなど専門団体をプラットホームとして活用することもできる。新しい政権に入ってもむやみに覆すことができないガバナンスを作ればさらに良いだろう。しかしこれを可能にするには官僚が「R&D(研究開発)権力」を手放す必要がある。政府主導が身についた企画財政部、科学技術情報通信部、産業通商資源部にそのようなことができるだろうか。官僚主義はそれで恐ろしい。

政治の流れに乗る政府R&D予算の代わりに企業R&D投資を増やす案も考慮してみる必要がある。廬武鉉(ノ・ムヒョン)政権が水素経済を持ち出したことがあるが、現代自動車が燃料電池自動車のR&Dをしてこなかったとすれば、今の水素経済ロードマップは不可能だったはずだ。企業R&D投資に破格的な税制優遇を与えれば、政府がするという産業生態系、クラスターなどの造成も相当部分を企業主導で進めることができる。不幸にも企業R&D税制優遇を「特恵」と見るこの国の政治家の認識レベルが障害だ。

もう一つの選択肢は政治的な妥協だ。経済協力開発機構(OECD)は韓国の産業・技術政策を評価し、あまりにもよく変わるとして「政策過剰」を指摘した。各政権が5年以内にすべてを片づけようとして政策を出すが、新しい成長動力が出てこない理由だ。与野党のどちらが次に政権を握ろうと、少なくとも科学技術政策、革新成長政策に関しては党派を超越するという約束が必要だが、このような慧眼を持つ政治家がいない。

政治と政府の内在的な問題で長期プロジェクト推進が難しいというのは、すなわち「国家戦略の不在」を意味する。革新成長をするという国としては致命的な弱点だ。

アン・ヒョンシル/論説・専門委員/経営科学博士