韓経:【コラム】韓国の「包容」という名の「差別」政策

  • 2019年2月13日

文在寅(ムン・ジェイン)大統領が国会で予算案施政演説をした昨年11月ごろからだ。耳が痛くなるほど聞かれた「所得主導成長」という言葉がそっと姿を消した。理論的裏付けが弱い上に、庶民や零細自営業者に破壊的結果が明確になったことに伴う避けられない退却だった。「所得主導成長3人衆」の張夏成(チャン・ハソン)政策室長、金顕哲(キム・ヒョンチョル)経済補佐官、洪長杓(ホン・ジャンピョ)経済首席秘書官も全員不名誉退陣した。

代わりに登場したスローガンが「包容国家」だ。成長の恩恵が少数の富裕層と大企業に集中して二極化が深刻化したとし、「ともに良く暮らす包容国家」を解決法として提示したのだ。ブランドは変わったが政策内容は所得主導成長の時と大同小異だ。「所得主導成長は持続的形態にさらに強化された」という金尚祖(キム・サンジョ)公正取引委員長の言葉通りだ。包容成長標榜から3カ月ぶりに政府が出した野心作が旧正月連休直前に発表された24兆ウォン規模のインフラ事業の予備妥当性調査免除だ。14の広域地方自治体の請願事業を経済性分析なく許可したのだ。

◇差別呼ぶ「見た目だけの包容」

「あれほど非難していた土建事業ではないのか」という批判に政府は「地方が良く暮らしてこそ包容国家」と答える。だが今回の予備妥当性調査免除は包容より差別政策に近い。最も多い4兆7000億ウォンの予算が配分された「金泉(キムチョン)~巨済(コジェ)間南部内陸鉄道」を見よう。この事業は2017年の予備妥当性審査で満場一致で否決された。それでも過度な支援金が策定されたのは他の自治体の有望なビジネスチャンスを妨げる逆差別に帰結される。「弱者保護のための差別は正当だ」というジョン・ロールズ式の正義論でも弁解は難しい。「政界の実力者」という金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道(キョンサンナムド)知事が大きな政治的成果を得た上に地域開発水準が高い嶺南(ヨンナム)圏の予備妥当性調査が8兆2000億ウォンで湖南(ホナム)圏の3.3倍に達する点は票用政策ではないのかとの疑いを育てる。大型インフラの属性上、中小建設会社より大手建設会社に仕事が集まるという点も弱者優先の包容成長の趣旨と相反する。

文大統領はこのほど予備妥当性調査免除の条件緩和を推進するという意志も明確にした。予備妥当性調査なしで作った霊岩(ヨンアム)F1競技場が8年間に6000億ウォンの累積赤字を出した「惨事」があちこちで再演されるのではないかとの懸念が出るほかない。

◇弱者狙撃した最低賃金・正規職化

包容と書いて差別と読まなければならない政策は予備妥当性免除だけでない。「時給1万ウォン」に向け疾走中である最低賃金制も同じだ。低賃金労働者のためだとして強行したが大量解雇事態を呼んでしまった。「給料は少なくても働きたい」という弱者の切迫した訴えから目を背け、最低賃金引き上げを口実に自分たちの賃金を高めようとする組織化された巨大労組の作戦に知らんぷりで目を伏せているところが大きい。その結果最下位20%の所得は1年前より9.6%急減し、これに対し最上位20%は7.8%増える悲劇が演出された。米国で賃金が安い有色人種の労働者を「除去」して白人労働者を保護しようとする優生学的含意を抱いて最低賃金制が誕生したという話を思い出させる。

非正規職の正規職化、公務員の大幅増員なども差別と排除を呼ぶ政策だ。100%正規職化はだれかにとっては「ロト」だが、就職市場の最弱者である就職活動生には門自体が閉ざされる思わぬ災難だ。人件費だけで年間40兆ウォンと推定される「公共部門81万人採用」は後世にこの上ない荷物を押し付ける世代差別だ。

事実包容国家は新しい概念ではない。「包容的自由主義」は李明博(イ・ミョンバク)政権発足時に提示された国政哲学だ。朴槿恵(パク・クネ)前大統領も就任時から「創造経営で包容的成長の地平を開く」という約束を繰り返した。悩まなければならないのは包容国家を現実化するしっかりとした方法論だ。組織できず力のない人たちのはしごを蹴飛ばしながら包容国家を語ることはできない。