韓経:アベノミクス設計者は語る 「政府はできることだけせよ」と(1)

  • 2018年10月18日

伊藤元重・東京大学名誉教授

「政府ができることは何なのかを把握して集中したことが、アベノミクス(安倍晋三首相の経済政策)成功の秘訣です。そのような面で韓国の所得主導成長論はむしろ経済をダメにする政策になる可能性があると考えます。公平分配という政府の能力を越える目標を追求しているだけでなく、中小企業の競争力を衰えさせているためです」

東京大学名誉教授の伊藤元重氏(現・学習院大学教授)は「アベノミクスの設計者」と呼ばれている。伊藤氏は2012年末、安倍首相が再執権に成功すると日本マクロ経済政策の青写真を描く経済財政諮問会議に民間委員として参加し、アベノミクスの理論的基盤を提供した。

伊藤氏は韓国経済新聞とのインタビューで、アベノミクスの成功を繰り返し強調した。「一般的な量的緩和を越える政府の金融および財政拡張政策の他にも、外国人観光客が増加して経済主体の活力が戻ってきた点などが複合的に作用した」と説明した。

伊藤氏は、成長率の低下と雇用不足に苦しめられる韓国に対しては苦言を呈した。「韓国は分配と格差解消の問題などを取り囲む社会的摩擦があまりにも激しく、経済を発展させる加速ペダルを踏みたくても踏めない状況」としながら「手っ取り早い政治的スローガンに縛られていてはダメだ」と突いた。

--最近、日本経済の復活に対する韓国社会の関心が熱い。日本経済が沈滞を繰り返した「失われた20年」時代を脱したとみてもよいか。

「もちろんだ。アベノミクスはものすごい勢いで実物経済に影響を及ぼした。企業の実績改善と共に雇用が増えて賃金が上昇し、長年にわたって日本経済を押さえ付けていたデフレ(経済活動が低迷して物価が下落する現象)から完全に脱却した。日本経済が全く新しいフェーズに入ったと考える。過去に戻ることはないだろう」

--日本経済が沈滞から脱出した要因が何か知りたい。

「実は15年前の小泉純一郎首相時代にも景気低迷から脱するチャンスはあった。当時も沈滞から脱出しようとする兆しがあったが、2006年からの相次ぐ首相交代や世界金融危機、東日本大震災などの変数でそのチャンスを逃した。アベノミクスがあったかなかったかの違いも大きな原因だと考える」

--アベノミクスのどのような点が日本経済の体質を変えたか。

「まず『三本の矢』と呼ばれる金融政策、財政政策、成長政策を“同時に”そして“大胆に”行ったことだ。中でも金融政策の役割が大きかった。30年以上、世界最高水準でまったく手つかずだった法人税率を低くした点や、その間満足に進めることができなかった政策を施行した点なども複合的に影響を及ぼした。安倍首相が安定的に長期間執権したことで難しい課題を解決していくことができたという点も幸運だった。安倍首相は毎月1~2回開かれる経済財政諮問会議をほとんど欠席したことがないほど経済を最優先視してきた」

--だが、日本では景気改善を体感しにくいという声もあるようだ。

「日本の名目国内総生産(GDP)は今年552兆8000億円に達すると見込まれている。15年間減少したが、2013年以降からは増加に転じた。日本企業はアベノミクスのおかげで多くの資金を確保し、どこに投資するべきか悩むような状況になった。このように経済が変化したが、体感度がマクロ指標とやや差があるのは、政府が政策を施行する過程でおおげさなメッセージを出してしまったことも大きい。国民の期待値が非常に高いといおうか」

--日本の完全雇用および人手不足現象は老年層が急増した人口構造のためではないだろうか。

「人口は重要な問題だが、経済学的観点から、経済が成長するためには人口よりも革新と生産性の向上のほうが重要だ。人口がすべてを決定づけるわけではない。高齢化が進んで団塊世代(1947~1949年生まれ)が引退しているが、アベノミクス導入後、日本では6年間労働力が増加している。今まで休眠状態だった女性労働と60歳以上のシニア労働を活用し始めたためだ。日本女性の労働参加率は米国を上回る水準だ。変に聞こえるかもしれないが、日本は今後20~30年間、若返っていくだろう。今日の70歳の平均歩行速度は20年前の50代水準だ。数字では高齢化したが、実質的な側面では労働力の年齢が若くなったといえる」

--アベノミクスに点数をつけるとしたら何点か。

「政策当事者として用心深い面はあるが、80点程度はつけられるのではないかと思う。20点足りない部分は『やりたかったがまだちゃんとできていない政策』が残っているためだ。三本の矢のうち、成長政策はまだ効果が目標値の20~30%にすぎない。社会保障制度や労働制度など社会改革を伴うものなので難しい部分があるためだ。もう少し弾みがつけばもっと高い点数をつけることができると期待している」