韓経:【コラム】安倍首相の非正規職政策が与える教訓

  • 2017年6月1日

安倍首相を知らない韓国人はほとんどいない。しかし安倍首相の前任者が誰かを知る人はそれほど多くない。日本政治史に関心がある人でなければ、野田佳彦前首相の名前を思い出すのは容易でない。

安倍首相は1980年代の中曽根康弘元首相、2000年代初期の小泉純一郎元首相に続いて、韓国人の脳裏に刻まれた数少ない日本の政治家の一人だ。安倍首相は先月28日、戦後歴代3番目の長期政権(1981日)の首相になった。

安倍首相のこうした地位とは対照的に、安倍首相に対する韓国人のイメージが良くないのも事実だ。「(慰安婦に謝罪の手紙を書くことは)毛頭考えていない」と声を高める姿を見て良い印象は抱きにくい。韓国特使団に向かって「文在寅(ムン・ジェイン)大統領は本当に北朝鮮に先に行くのか。性急な行動だ」と直接的に言及したのは、見方によっては外交的欠礼ともいえる。

そうだとしても安倍首相がどのように安定的に政局を運営して支持基盤を固めたのかを評価する必要がある。何よりも市場の自律に任せた労働市場改革の動きが目を引く。企業に圧力を加えることでは望む結果を得られないのを知っているからだ。

日本政府の非正規職解決法で確認できる。日本は非正規職の比率が37.5%(2016年基準)にのぼるが、正規職か非正規職かの労働形態にこだわらない。政府が賃金水準、雇用安定性、勤務環境という本質を考慮し、市場の要求を反映しながら、自然な形で解決方法を探っている。

「限定社員」の活用が良い例だ。少子高齢化で労働力不足が深刻な日本産業界は労働力確保レベルで、非正規職より雇用安定性を強化した限定社員の採用を増やしている。限定社員は勤務場所、職務、勤務時間などに制限があり、正規職より賃金が少ない代わりに超過勤務などの拘束が少なく、非正規職に比べて職業安定性と賃金が高いという中間形態だ。

韓国では非正規職の変形として批判の声が出るかもしれないが、日本では超過勤務がなく、望まない転勤をする必要もなく、職場生活の環境が改善されるとして歓迎の声が多い。政府が無条件に正規職雇用を増やすよう強要したというより、企業と勤労者の必要と需要に合わせた「市場的」解決法といえる。

文大統領は「非正規職ゼロ」を主要国政課題として強調した。「無条件に非正規職はいけないという認識は現実に合わない」という経営者総協会副会長の発言に対し、青瓦台(チョンワデ、大統領府)は「社会の二極化をもたらした当事者が言う言葉でない」と叱責した。

非正規職の処遇を改善し、雇用安全性を高めるべきだという点は、反論するのが難しい。しかし非正規職を減らして全体雇用を増やすとか、正規職を増やして勤労時間は減らすという矛盾した注文を企業に強制するのは正答でない。強圧に依存するよりも、企業を理解し労働市場と意見を交わしてきた安倍首相の日本が具体的な成果を出しているという点に注目する必要がある。

キム・ドンウク/東京特派員