韓経:【コラム】幾重もの山に囲まれた韓国経済

  • 2016年10月7日

先日、大きくはないが堅実な企業を経営してきた企業家が、売ることさえできれば会社を売って気楽に暮らしたいと話すのを聞いて驚いた。常に前向きなマインドで企業を運営し、尊敬されている企業家だったが、慰労の言葉は何も出てこなかった。

最近は経済専門家の間でも韓国経済に大きな危機が訪れるのではという心配が多い。そのたびに「危機の心配をするのは、それは危機ではないとの意味」と話したりした。しかし先週、全国民主労働組合総連盟(民主労総)と韓国労働組合総連盟(韓国労総)、公共連盟労組が集まり「公共部門成果年俸制反対」共同ストライキを宣言しながら掲げたスローガンを見て、ため息が出た。「労働市場改悪粉砕、構造改革中断、朴槿恵(パク・クネ)政権退陣」というスローガンで、労働市場を「労働法」に、「構造改革」を「整理解雇制」に、「朴槿恵政権」を「金泳三(キム・ヨンサム)政権」に変えれば、20年前の1996年に同じ場所で民主労総が叫んだスローガンと同じだ。

1997年の通貨危機当時、経済のファンダメンタルは堅調だが流動性危機を迎えたという弁解が通じた。ところがグローバル金融危機以降、予想されてきた海運業の構造改革を今日、明日と延ばし、韓進(ハンジン)海運が法定管理に進むのを見ると、1997年の韓宝鉄鋼が法定管理に進む時と同じ状況だという気がした。もちろん企画財政部の説明のように昨今の経済状況は「過消費、過剰投資、ウォン高による構造的な経常赤字と負債累積」による通貨危機当時とは違う。

しかし最近の韓国経済は実物部門の危機の可能性がより大きく、対外環境も良くない。外貨準備高など対外支払い能力指標が改善したとはいうが、危機の可能性を排除できる水準と見るには資本市場環境が大きく変わった。8月末現在の外貨準備高は3754億6000万ドルと過去最高水準だが、国際決済銀行(BIS)は必要外貨準備高を年間輸入額の4分の1(上半期基準で平均925億ドル)、短期外債(6月末基準1068億ドル)、そして外国人株式および債券投資資金の3分の1(1308億ドル)を合わせた金額と見ている。この基準で見ると外貨準備高は不足する水準ではないが、安心できる水準でもない。

格付けも頼りにならない。通貨危機当時も韓国は格付けが良かったが、危機が発生すると急落した。格付けは危機時の安全保障ではないということだ。格付けは主に信用リスク指標に焦点が合わされるため、実物経済の動向や体感景気とはかい離が存在するしかない。

輸出増加でなく内需不振による不況型経常黒字も望ましいものではない。大幅の経常黒字は、通貨危機のきっかけとなった当時の経常赤字累積と比較すれば確かにプラスの要素ではある。しかし「不況型黒字」が続けばウォン高を後押しし、これが企業の輸出競争力と収益性を脅かし、また輸出減少につながる可能性を内包しているからだ。また過度な韓国ウォン供給を誘発させ、不動産投機など非生産的部門に資金が流入し、経済に副作用を起こしたりもする。結局、輸出の増加でなく内需不振で発生する昨今の経常黒字はウォン高を通じて輸出を冷え込ませ、深刻な縮小型不況を招くことになる。

韓中間の技術格差が縮まり、未来の成長産業を発掘できない状態で、通貨危機当時のように企業の実績不振が続いている。米国の利上げが年内に少なくとも1回はあるはずで、今後数年間は続くだろう。中国経済に大きく依存している韓国経済は、揺れる中国経済に埋もれてもがく可能性を排除できない。長期化する低成長基調のもとで成長モメンタムを探すためには、果敢な事業再編と規制改革、労働市場改革など構造改革が必要だが、関連法規改正に率先すべき国会は今回の国政監査でも企業家を呼んで怒鳴るだけという姿を繰り返している。過度な悲観論は警戒するべきだが、知らないうちに企業家のため息が伝染しているようだ。

イ・インシル西江大教授・経済学