韓経:【コラム】「狂人戦略」に忠実な北朝鮮の金正恩委員長

  • 2016年9月22日

5回目の核実験を強行した金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は国際社会で狂人や暴君と見なされている。朴槿恵(パク・クネ)大統領も「金正恩委員長は精神状態が統制不能」と述べた。人民が飢えているにもかかわらず核とミサイルに数億ドルを注ぎ込んでいるためだ。果たして彼は狂人なのだろうか。

最近、海外メディアが興味深い分析をした。ニューヨークタイムズは「狂人ではなく過度に理性的(too rational)」と報じた。ウォールストリートジャーナルも「金日成(キム・イルソン)主席を真似る老練な独裁者(very skilled dictator)」と規定した。このような見方は経済学のゲーム理論に基いている。相手がいるゲームは自分の思い通りにはならない。特に冷戦、戦争、核などの国際関係はゲームそのものだ。

ゲーム理論の誕生からして戦争の渦中だった。ゲーム理論の創始者である数学者ジョン・フォン・ノイマンは第2次世界大戦当時、米国の原子爆弾開発計画「マンハッタンプロジェクト」を率いた。彼の核を通じた優越戦略は冷戦時代に核開発競争につながった。スタンリー・キューブリック監督の核戦争を描いた映画『博士の異常な愛情または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(1964)は彼をモデルにしたものだ。

金正恩委員長はどんなゲームをするのだろうか。彼の立場で脅威を最大化する戦略は自身がどれほど無謀かを相手に印象づけることだ。予測不可能性、好戦性、残酷な粛清を通じて金正恩委員長は「狂人」であることを認証した。暴力団がわざと全身の入れ墨を見せる心理と同じだ。過去20年間、北朝鮮は常に「ソウル火の海」と脅迫し、忘れる頃には核・ミサイル試験をした。いわゆる「狂人(madman)戦略」を駆使してきたのだ。

このような戦略も繰り返すと効力を失った。国際社会はしばらく「無視戦略」で対応した。「関心病患者」の料理法は関心を向けないことだ。いま北朝鮮は駄々をこねるように核実験周期が短くなり、米国を狙った大陸間弾道ミサイル(ICBM)で事態を大きくしようとしている。問題は米国の忍耐心だ。

世界は広島への原爆投下から70年間、核兵器を一度も使用しなかった。韓国戦争(朝鮮戦争)、ベルリン封鎖、キューバ危機、ベトナム戦争など危機は非常に多かった。それでも核戦争を避けることができたのは、2005年ノーベル経済学賞の受賞者トーマス・シェリング氏の功労が大きい。ケネディ大統領とジョンソン大統領の師であるシェリング氏はフォン・ノイマンの数学を排除して人間の心理と行動で戦略を導き出した。彼は核兵器を少しだけ使用するのは不可能だと力説した。一度使えばお互い破滅するまで撃ちまくるということだ。

シェリング氏はテロ集団でさえも最善の核兵器使用法は保有そのものであり使用でないことを強調した。金正恩委員長が狂人でなければこれを知らないはずはない。北朝鮮で失うものが最も多いのが金正恩委員長本人であるからだ。