韓経:【コラム】中国のTHAAD報復は仮面をかぶった祝福

  • 2016年8月8日

韓国政府のTHAAD(高高度ミサイル防衛体系)配備決定で国内外が騒々しい。THAADが配備される慶尚北道星州(ソンジュ)地域では住民の反対集会が連日続いている。ここには「平和と統一を開く人々」など外部勢力も加わっている。ソーシャルネットワークサービス(SNS)にはTHAAD関連の怪談が急速に広まり、BSE(牛海綿状脳症)事態が再来するようだ。政界も加わった。野党「共に民主党」の新人議員6人が中国を訪問して中国共産党の関係者と会談する計画を発表したのに続き、一部の野党議員が米ホワイトハウスのホームページの「THAAD反対請願」を督励している。5日現在、約7万人が署名に参加している。10万人が署名すれば、ホワイトハウスはこれに対する返答を検討しなければいけない。

当初からTHAADの韓半島(朝鮮半島)配備に反対の意思を明確にしてきた中国は、THAAD配備が公表されると直ちに激しく非難した。先月9日には中国の王毅外相が「いかなる弁解も無力だ」と述べた。同じ日、中国国防省の楊宇軍報道官は談話で、「中国の戦略的安全と地域の戦略的均衡のために必要な措置を考慮する」と軍事的対応の可能性まで表した。中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹紙・環球時報は翌日の論評で「中国は政治・経済・貿易・観光・文化・軍事・外交などの領域で韓国に圧力を加えなければいけない。使える手段は非常に多い」と主張した。

これを立証でもするかのように中国は知韓派学者を動員し、連日、「韓国たたき」をしている。人民日報は先月29日から始めた韓国と韓国大統領に対して露骨に攻撃、誹謗している。「韓国の指導者は小貪大失で国を最悪の状態に陥らせるべきではない」とし「THAAD配備は韓国を燃やす結果をもたらす」とも主張した。また、人民日報は韓国の元官僚や現職大学教授を動員し、韓国を非難する以夷制夷の計略も駆使している。韓国芸能人の中国ドラマ出演が突然キャンセルとなり、外国ドラマ放送回数を制限する措置が取られたのが報復措置の一環という未確認報道もある。

中国の行動は常識的には理解しにくい。さまざまな理由を挙げるが、説得力がない。疑われるのは沖縄から南シナ海につながる第一列島線の外に米国を追い出すという中国の戦略だ。この「反接近地域拒否(anti-access-area denial)」戦略に必須の長白山付近の東風-21中距離ミサイルが、THAADのAN/TPY-2レーダーシステムのために無力化するのを懸念しているのではないかと推測するだけだ。

いかなる理由であれ、中国が内政干渉という非難にもかかわらず韓国のTHAAD配備に反対するのは厳然たる現実だ。現在の水準を越えるさらに強力な貿易制限などの措置が続く可能性も排除できない。

しかし過度に心配する必要はない。この場合、中国の軟性権力(soft power)はさらに弱まるだろう。軟性権力とは価値と好みの自発的受け入れを基礎とする力だ。誰が経済力と軍事力を前に出して21世紀版の朝貢制度を建設するように見える中国を受け入れるだろうか。中国が米国と競争する真の主要2カ国(G2)に浮上するのはさらに難しくなるはずで、中国もこれをよく知っている。

さらに貿易は互恵的なものだ。中国も貿易制限の被害を受けることになる。たとえ報復を敢行しても、これは災難の仮面をかぶった祝福であるかもしれない。プラザ合意以降、円高に苦しんだ日本の産業は骨身を削る構造改革と効率化を通じて競争力を高めた。財政通貨政策の失敗で日本経済が長期沈滞を迎えたが、一部の分野を除いて産業競争力は落ちていない。このような競争力が長い不況の中でも日本経済を支えた。

その間、中国の経済的浮上で韓国の産業も長期間にわたり稼ぐことができた。しかし中国市場に対する過度な依存が経済的な健康を脅かす状況に達した。中国の経済的制裁は1960-1980年代に新しい市場を開拓した精神を生き返らせる触媒になるかもしれない。

イ・ヨンジョ慶煕大国際大学院教授政治経済学