韓経:【コラム】清廉な社会の前提条件=韓国

  • 2016年8月2日

さいは投げられた。韓国式接待慣行を改革しようという未曾有の実験が始まった。憲法裁判所が先月28日に合憲決定を下した「金英蘭(キム・ヨンラン)法」(不正請託及び金品等授受の禁止に関する法律)のことだ。

金英蘭法は昨年3月3日午後5時18分に国会本会議に上程され、17分後の午後5時35分に可決された。十分な事前検証や討論なく立法されたという指摘もあるが、憲法訴訟審判請求から1年4カ月後に出てきた憲法裁の判決で拒否できない現実になった。

過去に国民教育憲章を覚えたように、法施行日の9月28日からは多くの国民が金英蘭法を熟知しなければいけない。時間が経過すればしだいに明確になるだろうが、今のところは処罰の対象となる請託と要請の境界があいまいだ。特に罪の意識なく慣行と考えてきた接待文化と贈り物・慶弔費授受慣行も変えなければいけない。

◆消極行政に向かうべきでない

紆余曲折の末に施行を控えている金英蘭法が成功するには、何よりも副作用を最小限に抑える装置を用意する必要がある。最も心配されるのは公務員が消極的になることだ。金英蘭法は基本的に公務員の不正を監視する法であるからだ。そうでなくても規制の後ろに隠れるのに慣れている公務員だ。許認可権を握った公務員が「積極行政」「所信行政」をしなければ、企業関係者をはじめとする請願者だけが苦しむ。

最近会ったある公務員は「金英蘭法が施行されれば公務員は請願者に会わなくなるだろう。少しでも疑われるようなことは避けようとするのでは」と語った。不必要な誤解を招かないよう「消極行政」で一貫する文化が公職社会に広まるおそれがあるということだ。

金英蘭法の適用を受ける「民間人身分の公職者」に対する配慮も必要だ。金英蘭法は適用の対象を公務員のほか、公職関連団体、公共機関の役職員、報道機関の役職員、私立学校の関係者などと広範囲に規定している。政府や地方自治体の出資・出捐補助を受ける機関・団体はもちろん、財団法人と病院・医療院、社会・文化・芸術・体育・教育団体従事者の中にも該当者が少なくない。このうち「甲」の地位で請託・接待を受けるほどの人がどれほどいるか確認しなければいけない。

◆職場を奪う副作用を遮断すべき

金英蘭法がホテル・デパート・ゴルフ場の韓定食店などで働く一部の階層の雇用を奪う結果を招かないかチェックすることも重要だ。すでに農水畜産業界や花農家などは生存が脅かされるとして路上デモを始めている。急激な最低賃金引き上げと過度の非正規職保護対策、問題点が多い大型マート規制などがもたらした逆説的な現象を反面教師とする必要がある。

金英蘭法が社会の不信と階層間の違和感を助長する手段になることも防がなければいける。大韓弁護士協会が憲法裁の決定直後に出した声明で指摘したように、金英蘭法が言論統制法、家庭破壊法、国民不通法、伏地不動助長法になってはいけない。

金英蘭法の施行まで2カ月も残っていない。裁判所の判例が積み重なるまでの数年間は誰もが不安で紛らわしくなるしかない。しかし今からでも遅くはない。あいまいで非現実的な内容は施行令を通じて補完すればよい。そうしてこそ予想外の混乱や悔しい思いをする被害者を減らし、当初の法の趣旨も生かすことができる。「ひとまず施行した後に問題があればその時に正そう」というのは無責任だ。国民を「マルタ(丸太)」と見なしてはいけない。