韓経:【コラム】公務員の席だけ増やすR&D革新=韓国

  • 2016年7月14日

「安心して研究だけに没頭できるといいが」

韓国生命科学分野の世界的権威者であるキム・ピンネリ基礎科学研究院(IBS)RNA研究団長(ソウル大生命科学部教授)は、基礎科学の発展をテーマに開かれた対談で2014年下半期の話をし始めた。IBSとソウル大に所属しているキム氏は、当時、監査院や未来創造科学部(未来部)などから4回にわたって相次いで監査を受けた。

◆「研究に没頭したい」という訴え

キム氏が所属しているIBSは韓国人初のノーベル科学賞受賞者を輩出するために、政府が2012年に新設した国内最高権威の研究機関だ。最高の科学者を選抜して十分な予算を支援し、ノーベル賞受賞者を出すという趣旨だ。だがIBSはことし首相室(国務総理室)腐敗清算団の調査を受けている。首相室は大型国策事業の紀綱の緩みを防ぐために、検事まで投じて平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックやIBSを含む国際科学ビジネスベルト建設事業などを調査している。

最高科学者さえ研究に没頭したいと訴えるIBS事例は韓国科学界の現状を反映している。一般の政府外郭研究所はIBSに比べて研究開発(R&D)環境がさらに劣悪だ。本業である研究よりも課題受注競争や評価などで多くの時間を浪費する研究員が多い。

韓国は年間19兆ウォン(約1兆7600万円)を越える予算を政府R&Dに注ぎ込んでいるが、新市場を生み出すほど破壊力のある成果を出せずにいる。政府が論文件数のような量的基準を重視しているため、研究者は失敗しない研究に安住しているのが主因に挙げられる。

世界科学界は好奇心と独創的アイデアから始まる「ブルースカイ(bluesky)」研究に注目している。LED(発光ダイオード)産業を起こした中村修二カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授の青色LED研究も、初めは好奇心と不可能に対する挑戦からスタートした。このような挑戦を増やすには、自由に研究ができて結果が出る時まで待つことができる研究環境から構築しなければならない。

政府は昨年5月、「政府R&D革新方案」を出して課題受注負担を減らして政府部署ごとにそれぞれ運営する17カ所のR&D評価管理機関を再編して研究者の行政負担を軽減していくと発表した。1年が経過したが、具体的な成果を見つけるのは難しい。ついに朴槿恵(パク・クネ)大統領はことし5月、R&Dコントロールタワーとして青瓦台(チョンワデ、大統領府)科学技術戦略会議を新設して「不必要な規制と干渉を根元から根絶して不満ゼロの研究環境を作ってほしい」と注文した。首相が主宰する既存のコントロールタワーである国家科学技術審議会がその機能を果たせなかったと叱責した意味合いが強い。

◆また組織増やす公務員たち

それでも政府は戦略会議を支援するという名分で既存の組織はそのままに、未来部や企画財政部、産業通商資源部などの公務員13人で構成した支援団組織を新設した。コントロールタワー機能を強化するとし、昨年10月に未来部に科学技術戦略本部をスタートさせてから1年も経たずにまた組織を増やした。R&D革新を口実に公務員の席だけ増やしているという皮肉が出てくるわけだ。自由な研究環境を作るために政府部署と中間管理機関の干渉を減らさなければならないという革新方向からも外れる選択だ。政府出捐研究機関や大学など研究機関だけでなく、政府から革新するべきだという声が大きくなる理由を公務員たちは今一度深く考えなければならない。